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巻頭特集

2018年スマイル冬号
記事の内容、執筆者の所属等は発行当時のままです。

腎移植について考える

日本の腎移植件数は年々増加していますが、欧米諸国に比べると未だ少ないのが現状です。こうした背景を踏まえ、2018年度の診療報酬改定では、腎代替療法について腹膜透析(PD)とともに腎移植を推進する国の方向性が打ち出されています。今回の特集では、PDの次の治療選択肢の1つでもある腎移植について取り上げます。

武田 朝美 先生

名古屋第二赤十字病院

武田 朝美 先生
第一腎臓内科部長 兼 血液浄化療法部長

基礎知識

腎移植について教えてください。
腎移植には、移植を受ける人(レシピエント)の6親等以内の血族と配偶者および3親等以内の姻族から臓器の提供を受ける生体腎移植、心停止あるいは脳死と判定された第三者の方から提供を受ける献腎移植の2種類があります。日本の年間腎移植は、1,600件程度で、そのほとんどが生体腎移植であり、献腎移植は約150件、レシピエントは平均で13年ほど待たなければなりません。

腎移植では、本物の腎臓を体に入れるので、移植した腎臓がきちんと働けばこれに勝る治療はありません。ただし、移植する腎臓は片方(1つ)だけで、通常の半分しかないので慢性腎臓病(CKD)に近い状態だということを認識しておく必要があります。また、妊娠・出産には有利ですので、妊娠・出産を希望される方には移植をお勧めします。移植された腎臓の生着率※1は、生体腎移植の場合、1年で約99%、5年で約95%です。
腎移植は誰でも受けられますか。
基本的には誰でも受けられます。ただし、レシピエントと臓器を提供する人(ドナー)が、それぞれの適応条件を満たしていなければなりません。例えば、全身麻酔の手術に耐えられる身体状態であること、活動性の感染症や治癒していないがんがないこと、移植後の自己管理ができることは必須です。一方、高血圧や糖尿病が薬でコントロールできていない、肥満などの状態では、移植手術を受けられない場合があります。がんなどの病気の場合は完治して適応条件を満たせば、移植が可能になります。

以前は、レシピエントとドナーの血液型やヒト白血球抗原(HLA)抗体が合わなければ、移植はできませんでした。しかし、移植医療の向上と免疫抑制薬の進歩により、ドナーとレシピエントの血液型が異なる場合も移植が可能となりました。これは、HLA抗体についても同様です。
費用はどのくらいかかりますか。
移植費用は健康保険の適用となり、さらに身体障害者1級手帳の取得により自己負担額は減額され、月々の負担はおおむね透析と変わりません。また、ドナーの手術費用はレシピエントの保険が適用されますので、基本的にドナーの自己負担はありません※2。移植後に発生した費用はドナーの保険での負担となります。なお、献腎移植の登録には新規登録料と年1回の更新料がかかります。

*1:移植した腎臓が正常に働き透析に戻らなくてよい割合。
*2:移植に至らなかった場合など、検査費用などがドナーの自己負担となることがあります。

具体的に移植を検討する際の注意点

腎移植を希望する場合、
まず何から始めればよいでしょうか。
まずは腎移植について知ることが大事です。最近では、腎代替療法について、保存期の早い段階から、患者さんに詳しく説明するようになってきています。少しでも移植に興味を持たれたら、主治医にご相談ください。

生体腎移植の場合は、臓器を提供してくれるドナーがいることが条件です。ドナーは強制されることなく、自らの意思で臓器を提供することを希望していなければなりません。ドナーとレシピエントは移植の専門施設を受診し、お互いの意思が確認できた後、検査へと進みます。

一方、献腎移植の場合は、移植希望登録を行うことから始まります。施設登録となっていますので、移植手術を受けたいと考える病院で登録を行った後、検査となります。詳細は主治医にお尋ねください。
腎移植を受けるに当たって、
注意すべきことはありますか。
献腎移植では、いつ自分の順番が回ってくるか分かりません。臓器移植ネットワークから連絡があったときにすぐに受けられるよう、体調を整えておくことが肝要です。しっかりと日々の透析療法を行い、自己管理に努めましょう。腹膜炎で入院中では、残念ながら辞退しなければなりません。

生体腎移植の場合は、家族や親戚の中に反対する人がいないことが重要です。腎移植はレシピエントとドナーの2人だけで決められるものではありません。ドナーになる方のご両親やお子さん、親戚の中で移植の合意が取れていないと、なかなかうまくいきません。家族や親戚とよく話し合って決めることが大切です。

手術と術後の生活について

移植手術はどのように行うのですか。
生体腎移植の場合、ドナーの腎臓を摘出する手術と、レシピエントに腎臓を移植する手術の2つがあります。どちらの手術も全身麻酔下で行います。ドナーの手術では傷口が小さく術後の回復が早い内視鏡による手術が現在は主流となっています。手術時間はそれぞれ4時間程度で、ドナーの入院は1週間程度です。一方、通常レシピエントの手術は生体腎移植・献腎移植にかかわらず、背中側にある自分の2つの腎臓を残したままドナーの腎臓を右下腹部(腸骨窩)に移植します。ただし、多発性囊胞腎などで腎臓が大きくなっていて、移植するスペースがない場合は自分の腎臓を摘出することもあります。提供された腎臓の動脈と静脈をそれぞれレシピエントの動脈と静脈につなぎ、尿管は膀胱とつなぎます。術後、免疫抑制薬の投与や全身状態の管理を行い、移植した腎臓の機能が安定して服薬などの自己管理ができるようになれば退院となります。当院では、平均3週間程度の入院となっています。
通院の頻度について教えてください。
腎移植後すぐは、感染症などの合併症が多い時期です。また、この時期に拒絶反応が起きることもありますので、週1回の通院が必要です。3カ月を過ぎると2週に1回となり、6カ月を過ぎると月に1回と、だんだん通院回数は減っていきます。なお、移植後、腎機能に問題が出た場合は腎生検を行い、治療方針を決めていきます。状況に合わせた治療がうまくできるようになったことも、治療成績が向上した一因です。

また、ドナーの方も手術1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後に定期的に検査を受けていただいています。
移植後の生活で注意することはありますか。
手術後はドナーもレシピエントも片方(1つ)の腎臓で生活することになります。腎臓に悪影響を及ぼす高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病に気を付けて、腎機能を悪化させないようにすることが大切です。特に肥満と喫煙は禁物です。

また、レシピエントは、提供された腎臓の拒絶反応を防ぐために、免疫抑制薬の服用が欠かせません。経過によって用量や種類は変わるものの一生服薬する必要があり、毎日決められた時間に決められた量をきちんと服薬するという自己管理が大切です。
PD患者さんにメッセージをお願いします。
医療技術や治療薬の進歩により、腎移植は以前よりもハードルが低い治療になりました。PD患者さんが次のステップに進むときに、血液透析(HD)しかないと決め付けず、移植も選択肢の1つとして考えていただければよいと思います。ただし、全ての方にとって移植が最良の方法というわけではありません。家族や医療者と相談し、自分にとって最適な腎代替療法を選んでください。
腎臓病総合医療センターの皆さん 腎臓病総合医療センターの皆さん

名古屋第二赤十字病院の取り組み

腎臓病総合医療センターは、腎臓内科、移植外科・内分泌外科、小児腎臓科、血液浄化療法センターで構成され、各部門が協力して腎不全保存期、透析、移植の治療に当たっています。また、同センターでは、保存期教育入院の方、HDやPD患者、移植のレシピエントやドナーの方が同じ病棟に入院するため、患者さん同士の情報交換を通じてそれぞれの治療を知ることができる場となっていることも特徴です。

腎不全治療の選択に当たっては、病棟看護師と血液浄化センターのPD担当看護師が協力しながら、それぞれの患者さんに適した選択をチームでサポートしています。また、移植については、書籍『腎移植 あなたの疑問にすべて答えます2018』を同院医師が執筆するなど、啓発活動にも力を入れています。

病院データ

名古屋第二赤十字病院

名古屋第二赤十字病院

  • 〒466-8650
  • 名古屋市昭和区妙見町2-9
  • 電話 052-832-1121(代表)
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